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E氏の頭のなかでは、あのときのアップルとの話し合いは、罪のない技術情報の交換であり、アップルの重役たちが主張する、市場の山分けの強要などというものではなかった。 「電子メールを消したほうがいいですか?」F氏が冗談まじりにいった。
「だめだ」E氏は即座にこたえた。 7月23日木曜日、E氏が携帯電話に連絡を受けた翌日、ウォールストリートジャーナルは、アップルの申し立てにもとずく記事を掲載した。
M社がマルチメディア市場からアップルを力ずくで追い出そうとして、それに失敗すると、ウィンドウズを改造してクイックタイムの妨害をはかったという内容だった。 同じ日に、もとはM社の重役で、いまはR社の最高経営責任者をつとめるG氏が、上院司法委員会の席上で、マイクロソフトは意図的にウィンドウズのプログラムを書き換えて、競合他社のストリーミング方式のメディアプレイヤーが動かなくなるようにしたと証言した。
E氏は、M社のウィンドウズメディアプレイヤーの開発も担当していたので、どうやら希望通りの結果になりそうだった。 彼は今世紀最大の反トラスト法戦争の最前線へ送りこまれようとしていたのだ。
クロームが発表されてからの数週間、業界誌はたいへんな騒ぎになった。 テレビゲームなみのアニメーションを、従来は動きがなかったウェブに投入するというアイディアは、ハイテク方面のライターやアナリストを熱狂させた。
クロームエフェクトが動作する5000万台のパソコンが(これから1年くらいで)出荷されたら、このテクノロジーは、パソコンをアップグレードする最高にクールな動機になるだろう。 ギガ・グループに所属する、M社に好意的なアナリスト、E氏は、クロームを「宗教体験」になぞらえた。
「まさに革命だ」E氏は語った。 アップル専門の業界誌、マックウィーク誌さえ、こんな調子だった。
かつていっしょにクロームを夢見たビースティ・ボーイは、いま、そのテクノロジーを自分のために利用しようとしていた。 E氏とともにあれこれアイディアを練ってから、A氏ははじめて自分の会社を興し、W社と名付けた。
F社と同様に、クロームめっきの専門工場として、ハイエンドの進歩的なウェブサイトを制作するつもりだった。 だが、ひとりではむりだったので、狂乱の雇用騒ぎがはじまった。
A氏は、ワシントン州のピュージェット湾から、世界中のあらゆる場所をさがしまわった。 ケンブリッジ大学の数学者、K氏まで勧誘した。


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